テナントの解約は何か月前?3か月・6か月の違いと契約確認7項目

店舗やオフィスを閉店・移転するとき、「テナントの解約は何か月前までに伝えればよいのか」と迷うことがあります。

事業用物件では「6か月前」と聞くことが多いため、法律で一律に6か月前と決まっていると思われることもあります。

しかし、借主側からのテナント解約について、すべての店舗・オフィスに共通する「6か月前」という法律上のルールがあるわけではありません。

実際には、

  • 普通建物賃貸借か定期建物賃貸借か
  • 契約期間が定められているか
  • 中途解約条項があるか
  • 契約書で何か月前予告と定めているか

によって変わります。

事業用の賃貸借契約では3か月前・6か月前などの解約予告期間が設定されている例が多く、特にオフィスや店舗で6か月前予告の契約は珍しくありません。

一方、契約期間の定めがない建物賃貸借については、民法上、借主からの解約申入れから3か月という一般原則があります。

テナント退去では「一般的には6か月」と覚えるのではなく、自社の契約書で「何か月前」「いつまでに」「どの方法で」通知する必要があるのかを確認することが重要です。

この記事では、テナントの解約予告期間について、3か月・6か月の違い、定期借家、中途解約、予告期間が足りない場合の負担まで整理します。

目次

テナントの解約は何か月前?

事業用店舗・オフィスでは、契約上3〜6か月前程度の解約予告期間が設定されているケースがあります。

特に、

  • オフィス
  • 商業ビル
  • 店舗
  • 大型テナント

では6か月前予告の契約も多く見られます。

ただし、これは「法律で事業用テナントは必ず6か月前」と決められているという意味ではありません。

最初に契約書を見る

賃貸借契約書の中から、

  • 解約
  • 中途解約
  • 解約予告
  • 契約解除
  • 契約期間

などの項目を探します。

例えば、

「乙は、6か月前までに書面で通知することにより本契約を解約できる」

と記載されていれば、その条項が実務上の出発点になります。

「テナントは6か月前」が法律上の一律ルールではない

事業用不動産では6か月前予告が多いため、次のような説明を目にすることがあります。

「店舗は6か月前に解約通知する」

「オフィスは法律上6か月前」

しかし、後者は正確ではありません。

6か月という数字には複数の制度がある

不動産賃貸借には、別々の場面で「6か月」という数字が登場します。

例えば、

  • 借主の契約上の中途解約予告:6か月とする契約例
  • 貸主から期間の定めのない建物賃貸借を解約する場合:借地借家法上の6か月
  • 定期建物賃貸借の期間満了通知:貸主から満了1年前〜6か月前まで

などです。

これらを混同すると、「借主も法律上必ず6か月前」と誤解しやすくなります。

期間の定めがない建物賃貸借なら民法上は3か月

民法617条では、期間の定めのない建物賃貸借について、解約申入れから3か月を経過すると契約が終了するという一般原則があります。

例えば、契約期間が定められていない建物賃貸借で借主が解約する場合には、この3か月が問題になることがあります。

ただし実際の事業用契約は期間を定めていることが多い

店舗やオフィスでは、

  • 2年間
  • 3年間
  • 5年間
  • 10年間

など契約期間が設定されているケースが一般的です。

そのため、実務では民法617条の3か月だけを見て判断するより、契約書の中途解約条項を確認することになります。

テナント解約で確認する7項目

  1. 普通借家か定期借家か
  2. 契約期間がいつまでか
  3. 中途解約できる契約か
  4. 解約予告期間は何か月か
  5. 通知方法と到達日
  6. 予告期間不足時の賃料・違約金
  7. 原状回復・明渡し期限

1.普通借家か定期借家か確認する

契約書のタイトルや契約条項を確認します。

主に、

  • 普通建物賃貸借契約
  • 定期建物賃貸借契約

があります。

両者では契約終了の考え方が異なります。

普通建物賃貸借

契約期間が満了しても一定の条件で更新されるタイプの契約です。

借主が契約期間途中で解約できるかについては、中途解約条項を確認します。

定期建物賃貸借

原則として契約期間満了によって契約が終了し、更新はありません。

継続する場合は再契約という形になります。

定期借家では「契約終了日が決まっているから、いつでも途中で解約できる」という意味ではありません。

事業用の定期借家は中途解約条項が特に重要

定期建物賃貸借について、法律上、一定の借主に1か月前の中途解約を認める規定があります。

ただし対象は、床面積200㎡未満の居住用建物で、転勤・療養・親族の介護などのやむを得ない事情により生活の本拠として使用できなくなった場合などです。

通常の店舗・事務所だから1か月前で定期借家を解約できる、という制度ではありません。

事業用の定期借家では、契約書に借主側の中途解約条項があるか確認します。

2.契約期間がいつまでか確認する

例えば、

  • 契約開始:2025年4月1日
  • 契約期間:3年間
  • 契約満了:2028年3月31日

という契約なら、2026年9月に退去したい場合は契約期間途中です。

この場合、単に「6か月前に通知すればいつでも退去できる」とは限りません。

中途解約権が契約上認められているか確認します。

契約期間満了による終了と中途解約を分ける

契約書には、

  • 満了時の終了
  • 更新
  • 中途解約

が別々に書かれていることがあります。

「契約終了の6か月前までに通知」と書いていても、それが、

  • 期間途中でも6か月前予告で解約できる条項なのか
  • 契約満了時に更新しないための通知なのか

を読み分けます。

3.中途解約できる契約か確認する

期間を定めた賃貸借では、契約期間内の中途解約が当然に自由とは限りません。

実務では、契約書に、

「借主は6か月前の書面による予告により本契約を中途解約できる」

などの条項を設定するケースがあります。

中途解約条項がない場合

契約期間の途中で閉店・移転したいからといって、借主が一方的に好きな時期を指定して終了できるとは限りません。

貸主との合意解約などを相談する必要が生じる場合があります。

中途解約そのものについてはART-285で詳しく扱います。

4.解約予告期間を確認する

次に「何か月前か」を確認します。

事業用では、例えば、

  • 1か月前
  • 3か月前
  • 6か月前

など、契約ごとに異なります。

現行の店舗・オフィス物件でも6か月前予告の条件は多数見られます。

大型物件ほど予告期間が長い場合もある

貸主にとっては、現在のテナントが退去してから次のテナントを募集・契約するまで時間が必要です。

特に、

  • 大型オフィス
  • 大型店舗
  • 特殊用途物件

では長めの予告期間が設定される場合があります。

ただし、物件規模だけから期間を推測せず契約書を確認します。

「6か月前」とは具体的にいつ?

例えば2027年3月31日に契約を終了させたい契約で、「6か月前まで」と定めているなら、2026年9月末付近が一つの基準になります。

ただし契約書によって、

  • 月末解約のみ
  • 日割り不可
  • 通知到達日を基準
  • 所定書式の受付日を基準

など条件が異なります。

単純にカレンダーで6か月戻すだけで決めません。

5.通知方法と「いつ届いたか」を確認する

契約書に、

  • 書面
  • 所定の解約通知書
  • 管理会社指定フォーム
  • 内容証明郵便

などの方法が定められている場合があります。

電話で伝えただけでは足りない契約もある

管理会社へ電話して、

「半年後に閉店予定です」

と伝えていても、契約上の正式な解約通知として扱われるとは限りません。

いつ正式な解約申入れとして受理されたのか確認します。

発送日と到着日を混同しない

通知の効力については、相手方への到達時期が問題になることがあります。

そのため、期限直前に郵送する場合は、

  • 発送日
  • 到着日
  • 管理会社の受領日

を確認します。

余裕を持って提出する方が安全です。

6.解約予告期間が足りない場合の負担を確認する

例えば6か月前予告の契約なのに、2か月後に退去したい場合があります。

その場合、店舗から物理的に出ること自体は早くできても、契約上の賃料負担まで2か月で終了するとは限りません。

予告期間分の賃料を求められる場合

契約によっては、解約予告期間を満たさない場合に、予告期間相当分の賃料を支払うことで早期解約できる条件があります。

例えば、

  • 6か月前予告
  • 実際には1か月後に退去希望

なら、残る5か月相当の賃料について精算が必要になる可能性があります。

ただし、どのように精算するかは契約内容によります。

「退去日」と「賃料が止まる日」は別になることがある

店舗を閉店し、荷物もすべて搬出したとしても、契約上の終了日までは賃料が発生する場合があります。

そのため閉店判断では、

  • 営業終了日
  • 原状回復開始日
  • 明渡し日
  • 契約終了日
  • 賃料最終負担日

を分けて整理します。

短期解約違約金が別にある場合もある

解約予告期間を守っていても、

  • 1年未満で解約すると賃料3か月分
  • 2年未満なら賃料2か月分

など、短期解約違約金が設定されている契約があります。

現行の事業用物件でも、6か月前予告とは別に短期解約違約金を設定している例があります。

「6か月前に通知したから追加費用はない」とは限らないため、解約予告条項と違約金条項をセットで確認します。

7.原状回復と明渡し期限まで逆算する

解約予告を出したら、その日から退去準備が始まります。

例えば6か月後に契約終了する場合でも、6か月後まで営業できるとは限りません。

契約終了日までに、

  • 商品・在庫搬出
  • 家具・什器搬出
  • 厨房機器・OA機器撤去
  • 原状回復工事
  • 貸主検査
  • 是正工事
  • 鍵返却

を終える必要がある場合があります。

原状回復期間を引いて営業終了日を決める

例えば、

  • 契約終了日:3月31日
  • 原状回復工事:3週間
  • 貸主検査・是正:1週間

なら、3月31日まで営業してから原状回復することはできません。

逆算すると、2月末〜3月初旬頃には営業を終える必要がある可能性があります。

店舗とオフィスで解約予告期間は違う?

法律上、「店舗は○か月、オフィスは○か月」と用途だけで一律に分かれているわけではありません。

実際には契約条件が異なります。

店舗

店舗では、

  • 閉店
  • 居抜き
  • 造作譲渡
  • スケルトン返し

などとの関係で早めの確認が重要です。

店舗の解約予告全般については、店舗の解約予告とは?をご覧ください。

オフィス

オフィスでは、新オフィスの契約・内装・通信工事と旧オフィスの解約時期を調整する必要があります。

特に6か月前予告では、新旧オフィスの賃料が重なる期間が発生することがあります。

詳しくは、オフィスの解約予告は何か月前?をご覧ください。

解約通知は新しい物件が決まってから出す?

これは移転計画で難しい判断の一つです。

旧物件の解約通知を早く出せば二重賃料を減らせますが、新物件がまだ決まっていなければ移転先が見つからないリスクがあります。

先に確認すべきなのは解約予告期間

まず旧契約について、

  • 何か月前予告か
  • 解約予告を撤回できるか
  • 契約終了日を変更できるか

を確認します。

一般に解約予告を提出した後、借主の都合だけで自由に撤回できるとは限りません。

そのため、新しい物件が未確定の段階で解約通知を出す場合はリスクを理解して進めます。

解約予告を出した後に閉店をやめたくなった場合

売上が回復した、新しい物件が見つからないなどの理由で解約を撤回したくなる場合があります。

しかし貸主側は、解約通知を受けた時点から次のテナント募集を始めている可能性があります。

借主側から一方的に、

「やはり解約を取り消します」

と元に戻せるとは限りません。

継続を希望する場合は早急に貸主へ相談します。

6か月前予告で閉店を決めた場合のスケジュール例

例えば9月末に解約通知を提出し、翌年3月31日終了となる場合を考えます。

9月〜10月

  • 解約通知
  • 原状回復条件確認
  • 居抜き可否確認
  • 原状回復概算見積

11月〜12月

  • 居抜き・後継テナント募集
  • 厨房機器・什器・家具査定
  • 原状回復工事内容確定

1月〜2月

  • 居抜き成立可否を判断
  • 原状回復正式発注
  • 閉店・移転準備

3月

  • 営業終了
  • 設備・家具搬出
  • 原状回復
  • 貸主検査
  • 是正
  • 明渡し

実際の必要期間は店舗規模・工事内容によって異なります。

解約予告前に確認するチェックリスト

  • 普通借家か定期借家か確認した
  • 契約開始日を確認した
  • 契約満了日を確認した
  • 中途解約条項を確認した
  • 解約予告期間を確認した
  • 「3か月」「6か月」等の起算方法を確認した
  • 月末解約条件を確認した
  • 解約通知方法を確認した
  • 通知先を確認した
  • 受付日・到達日を確認した
  • 予告不足時の負担を確認した
  • 短期解約違約金を確認した
  • フリーレント返還等を確認した
  • 原状回復条件を確認した
  • 原状回復工期を確認した
  • 貸主検査日程を確認した
  • 営業終了日・引越し日を逆算した

テナント解約についてよくある質問

テナントは何か月前に解約を伝えますか?

事業用では3〜6か月前などの契約例がありますが、一律ではありません。現在の賃貸借契約書に記載された解約予告期間を確認してください。

テナントは法律で6か月前と決まっていますか?

借主側の事業用テナント解約について、すべての物件に一律6か月前という法律上のルールがあるわけではありません。期間の定めのない建物賃貸借では民法上3か月という一般原則があり、期間のある契約では中途解約条項が重要です。

契約書に6か月前と書いてあれば6か月分の家賃が必要ですか?

通常は契約上定められた終了日まで賃料負担が続くことがあります。早期明渡し・即時解約予告金等の扱いは契約条項と貸主との合意を確認してください。

店舗を1か月後に閉店しても6か月後まで家賃がかかりますか?

営業終了日と契約終了日は別です。6か月前予告の契約なら、店舗を先に閉めても契約終了まで賃料負担が残る可能性があります。

定期借家は1か月前に解約できますか?

通常の事業用店舗・オフィスについて一律に1か月前解約できるわけではありません。法律上の1か月中途解約制度は一定の居住用建物に限定されています。事業用では契約上の中途解約条項を確認してください。

解約予告を出したら撤回できますか?

借主側だけで自由に撤回できるとは限りません。貸主が次テナント募集を始めている可能性もあるため、撤回希望の場合は早急に貸主と協議します。

メールで解約通知しても大丈夫ですか?

契約によります。所定書面や管理会社指定フォームを求める契約もあるため、契約書の通知方法・提出先を確認してください。

6か月前予告なら6か月後まで営業できますか?

必ずしもそうではありません。契約終了日までに原状回復・貸主検査・明渡しを完了する必要がある場合、工事期間分だけ営業を早く終了する必要があります。

契約途中でも6か月前なら必ず解約できますか?

契約に中途解約権が設定されているか確認する必要があります。期間を定めた契約で中途解約条項がない場合は、6か月前に通知しただけで当然に解約できるとは限りません。

テナントの解約は「何か月前か」だけで判断しない

テナントを解約するときは、

  1. 普通借家・定期借家
  2. 契約期間
  3. 中途解約条項
  4. 解約予告期間
  5. 通知方法
  6. 予告不足・違約金
  7. 原状回復・明渡し

を確認します。

事業用テナントでは6か月前予告の契約が多く見られますが、それを「法律上の一律ルール」と考えないことが重要です。

期間の定めがない建物賃貸借では3か月という民法上の一般原則があり、期間のある契約では契約上の中途解約条項が実務上重要になります。

また、解約通知を出して終わりではありません。

店舗・オフィスの場合は、原状回復、設備撤去、引越し、貸主検査まで終えて初めて明渡しとなることがあります。

「何か月前に言えばいいか」だけでなく、「その日から契約終了までに何を終わらせる必要があるか」まで逆算して退去計画を立ててください。

契約・退去手続き全体については、契約・退去手続きガイドをご覧ください。

店舗の解約については、店舗の解約予告とは?で詳しく整理しています。

オフィス移転の場合は、オフィスの解約予告は何か月前?をご覧ください。

現在の契約書を見ても、6か月前予告、中途解約、違約金、原状回復の関係が整理できない場合は、お問い合わせから物件用途、契約期間、希望退去日、契約書に記載されている解約条件をご連絡ください。

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