テナント退去の立会いでは何を確認する?店舗・オフィスのチェックリスト

店舗やオフィスを退去するとき、原状回復工事や残置物撤去が終わった後に、貸主・管理会社と「退去立会い」を行うことがあります。

退去立会いは、単に店舗やオフィスを一周して鍵を返すだけの時間ではありません。

契約で求められた返還状態になっているか、残置物がないか、残すことを合意した設備が正しく残っているか、鍵やカードなどの貸与物がそろっているかを確認し、その時点の状態を双方で記録する重要な工程です。

特に事業用テナントでは、内装・設備・原状回復工事の範囲が大きくなりやすいため、立会い当日に初めて工事範囲や費用負担を話し合うのではなく、事前に契約・工事範囲・完成状態をそろえておくことが重要です。

目次

退去立会いの目的は「現状を双方で確認して記録すること」

退去立会いでは、貸主・管理会社と借主が退去時点の物件状態を確認します。

主な確認対象は次のとおりです。

  • 原状回復工事が合意した範囲まで完了しているか
  • 撤去すべき造作・設備が残っていないか
  • 借主所有の残置物がないか
  • 残すと合意した設備が残っているか
  • 床・壁・天井・設備等に未確認の損傷がないか
  • 鍵・カードキー・警備タグ等がそろっているか
  • メーターやライフラインの状態
  • 追加工事・是正箇所があるか

重要なのは、立会いそのものが「その場で最終請求額を決める場」とは限らないことです。

現況確認、追加工事の確認、費用負担の合意、最終金額の承認は、それぞれ別の意味を持つ場合があります。

立会い前に用意しておきたい資料

退去当日に記憶だけで判断すると、入居時の状態や貸主との合意内容を確認できません。

可能であれば次の資料をそろえておきます。

資料 確認すること
賃貸借契約書 原状回復、返還、設備、明け渡し条件
原状回復特約 通常条項とは別の負担・工事範囲
工事区分表 A工事・B工事・C工事、指定業者
入居時写真 入居以前からあった状態との比較
入居時図面 増設・撤去した造作や設備の確認
貸主・管理会社の指示書 今回の返還状態
工事見積・施工範囲表 何を撤去・復旧したか
工事完了写真 施工済み箇所の確認
居抜き・残置承諾書類 残してよい設備・造作
鍵・カード等の貸与記録 種類・本数

店舗の明け渡し全体については店舗の明け渡し手順、オフィスはオフィス退去の手順も確認してください。

立会い前に残置物をできるだけなくしておく

家具・什器・在庫・段ボールなどが大量に残っていると、床や壁、設備の状態を十分に確認できません。

立会いまでに、移転・売却・返却・廃棄する物を整理します。

ただし、店舗やオフィスにある物をすべて借主判断で撤去してよいとは限りません。

特に、

  • 貸主所有設備
  • リース・レンタル品
  • 後継テナントへ引き継ぐ設備
  • 居抜きで残すことを承諾された造作
  • ビル設備

は所有関係・残置承諾を確認してから動かします。

店舗については店舗の残置物撤去、オフィスについてはオフィスの残置物撤去も参考になります。

原状回復工事は立会い前にどこまで終える?

退去立会いのタイミングは物件によって異なります。

原状回復工事前に貸主・管理会社と立会い、工事範囲を確定する場合もあれば、工事完了後に最終状態を確認する立会いを行う場合もあります。

したがって、「退去立会い=必ず工事完了後」と一律には決められません。

今回行う立会いが、

  1. 工事範囲を決めるための事前立会いなのか
  2. 原状回復完了後の確認なのか
  3. 最終的な明け渡し立会いなのか

を事前に確認します。

立会い当日のチェック項目

床材そのものだけでなく、借主が増設した什器・パーティション・厨房機器などを撤去した跡を確認します。

  • 固定金物・アンカー跡
  • 接着剤・テープ跡
  • 床材の欠損
  • OAフロアの開口・配線跡
  • 厨房土間の撤去・補修状態

  • 造作壁・棚・看板等の撤去跡
  • ビス・アンカー穴
  • クロス・塗装の補修
  • 設備配管等の貫通部

天井

  • 照明・ダクト等の撤去跡
  • パーティション固定跡
  • 天井材の欠損
  • 借主増設設備の残置

電気・通信

オフィスでは特に、電源・LAN・電話・OAフロア内配線などを確認します。

借主側で増設した配線をどこまで撤去するかは、契約やビル側の指示を確認してください。

給排水・ガス・厨房設備

飲食店・美容室・クリニック等では、給排水やガス、厨房設備の処理が重要になります。

設備本体だけでなく、配管の撤去・閉栓・残す範囲が指示どおりになっているかを確認します。

空調・防災・ビル設備

空調や防災設備は貸主・ビル側設備を含む場合があります。

借主判断で撤去した設備と、ビル側へ返す設備を区別します。

店舗では厨房・看板・ダクトまで確認する

店舗の退去立会いでは、一般的な床・壁・天井に加えて業態固有設備を確認します。

飲食店なら、

  • 厨房機器
  • グリストラップ
  • 給排水
  • ガス
  • フード・ダクト
  • 厨房床
  • 看板・袖看板

などです。

特にダクトや屋外設備は店内から見えない部分が残っている場合があるため、工事範囲表や完了写真と照合します。

オフィスではOAフロア・入館カード・セキュリティも確認する

オフィスでは、店舗とは違う確認項目があります。

  • OAフロア内の配線
  • サーバー・ネットワーク設備
  • パーティション
  • 会議室等の造作
  • 入館カード
  • カードキー
  • 警備タグ
  • 機械警備設備
  • 貸与されたリモコン
  • ロッカー・書庫等の残置

特に入館カードなどは、社員へ配布した枚数とビル側から借りた枚数が一致しているかを、退去直前ではなく事前に確認しておくと整理しやすくなります。

共用部も確認する

大量搬出や解体工事を行った場合、専有部だけでなく共用部の確認を求められることがあります。

たとえば、

  • 廊下
  • 貨物用エレベーター
  • エレベーターホール
  • 搬入口
  • 養生した壁・床

などです。

搬出前から存在した傷なのか、今回の工事・搬出で生じたものなのかが問題になりそうな場合は、搬出前後の写真が役立ちます。

写真は「全景」と「指摘箇所」の両方を残す

退去立会いで指摘された部分は写真を残しておくと、後日届く見積や是正指示と照合しやすくなります。

撮影するときは、指摘箇所だけを大きく撮るのではなく、どの場所か分かる全景と、損傷・工事状態が分かる近景の両方を残します。

可能であれば、

  • 撮影日
  • 場所
  • 指摘内容
  • 立会い担当者の説明

もメモしておきます。

メーター・ライフラインも必要に応じて記録する

店舗では電気・ガス・水道、オフィスでは電気等の最終利用状況を確認する場合があります。

メーター値を確認する物件では、数値が分かる写真を残します。

ただし、原状回復工事や完了検査で電気・水道等を使用する場合もあるため、営業終了日だけを基準に契約を停止しないよう注意してください。

鍵・カード・リモコンは種類と本数を照合する

退去立会い時には、借りている物を返却します。

対象は店舗の入口鍵だけではありません。

  • 正面入口の鍵
  • 裏口・搬入口の鍵
  • シャッターキー
  • ポストキー
  • カードキー
  • 入館カード
  • 警備タグ
  • 空調・シャッター等のリモコン
  • 共用部用の鍵

貸与時の記録と返却本数を照合し、誰が何を受け取ったのか記録します。

確認書へ署名する前に「何を確認する書面か」を読む

立会いの最後に、確認書・立会い票・原状回復確認書などへの署名を求められることがあります。

署名を求められたからといって、一律に拒否する必要はありません。

一方で、内容を読まずに署名するのも避けた方がよいでしょう。

確認したいのは、その書面が、

  1. 現況に傷・未施工箇所があることの確認
  2. その箇所を借主が是正することの合意
  3. 借主が費用を負担することの合意
  4. 具体的な金額の承認

のどこまでを意味しているかです。

「傷があることは確認するが、費用負担は未確認」という状態なら、その点が書面上分かる形になっているか確認します。

空欄のある確認書は内容を確認してから署名する

工事範囲や金額など重要な部分が空欄のまま署名を求められた場合は、何が後から記載されるのか確認します。

その場で確定していない項目があるなら、

  • 後日見積
  • 費用負担未確定
  • 貸主確認後に回答
  • 借主確認後に回答

など、未確定であることを双方が分かるようにしておくと認識違いを減らせます。

署名した書面の控えは保管してください。

追加工事を指摘されたら5点を確認する

立会い時に、「ここも撤去してください」「この部分をやり直してください」と追加指摘が出ることがあります。

その場合は、少なくとも次を確認します。

確認項目 内容
場所 どの箇所が対象か
状態 現在どうなっているか
根拠 契約・特約・返還指示のどこに基づくか
工事 何をどの状態まで直すか
期限・費用 いつまでに誰の負担で行うか

追加工事の指摘自体が直ちに不当という意味ではありません。

工事漏れがあれば是正が必要になる場合があります。

ただし、口頭で曖昧なまま追加工事を承認するのではなく、内容を明確にしてから施工会社とも共有します。

立会い当日に費用を即決する必要があるとは限らない

追加補修などについて、その場で金額が提示される場合があります。

契約や既存見積ですでに金額・単価が決まっている場合もありますが、立会い当日に初めて提示された費用については、

  • 工事内容
  • 数量
  • 単価
  • 既存見積との重複
  • 指定業者工事か

を確認してから判断する方法もあります。

確認書が「現況確認」なのか「費用承認」なのかを分けて考えることが重要です。

施工会社も立ち会った方がよいケース

原状回復工事の範囲が大きい店舗・オフィスでは、施工会社の担当者が立会いに参加すると確認しやすい場合があります。

特に、

  • スケルトン工事を行った
  • B工事・C工事が混在する
  • 設備撤去範囲が複雑
  • 貸主から追加指摘が出る可能性がある
  • 完了図面・施工写真の説明が必要

といったケースです。

ただし、誰が参加する必要があるかは管理会社の退去手順に従ってください。

貸主・管理会社が立会いを行わない場合

物件によっては対面立会いを行わず、写真・完了報告書・鍵返却などで明け渡しを進める場合があります。

その場合でも、借主側で記録を残します。

  • 退去時の全景写真
  • 工事完了写真
  • 残置物がないことが分かる写真
  • 設備の状態
  • メーター値
  • 鍵等の返却記録
  • 管理会社へ送った完了報告
  • 受付・受領返信

貸主側が来ないことを理由に、自己判断で鍵をポストへ置くなどせず、正式な返却方法を確認してください。

退去立会い後にも確認することがある

立会いが終わればすべての手続きが終了するとは限りません。

その後に、

  • 是正工事
  • 追加工事の見積
  • 最終原状回復費の確定
  • 未払賃料・共益費の精算
  • 敷金・保証金の精算

などが残る場合があります。

立会い終了時に、「次に何があり、誰からいつ連絡が来るのか」まで確認します。

退去立会い当日のチェックリスト

  • 契約書・特約を持参または確認できる
  • 入居時写真・図面を確認できる
  • 貸主の返還指示を確認できる
  • 残置物がない
  • 残す設備が合意内容と一致している
  • 原状回復完了箇所を確認した
  • 床・壁・天井を確認した
  • 電気・配線・設備を確認した
  • 店舗固有設備を確認した
  • オフィスのOAフロア・配線を確認した
  • 共用部を確認した
  • 指摘箇所を写真撮影した
  • 追加指摘を記録した
  • 是正期限を確認した
  • 鍵・カード等の返却本数を確認した
  • 確認書の内容を読んだ
  • 署名した書類の控えを保管した
  • 立会い後の精算・連絡予定を確認した

テナント退去の立会いでよくある質問

退去立会いは何のために行いますか?

退去時点の物件状態、原状回復の完了状況、残置物、設備、鍵などを貸主・管理会社と確認し、記録を残すために行います。

立会い前に原状回復を全部終える必要がありますか?

物件の手順によります。工事範囲を決めるための事前立会いと、工事完了後の立会いでは目的が違います。今回の立会いがどの段階なのか確認してください。

何を持っていけばよいですか?

賃貸借契約書、原状回復指示、入居時写真・図面、工事範囲表、完了写真、鍵・カード等の貸与物などを確認できる状態にしておくと進めやすくなります。

確認書にはその場で署名しなければなりませんか?

契約や管理会社の運用によります。署名する場合も、書面が単なる現況確認なのか、工事範囲・費用負担・金額まで承認する内容なのかを確認してください。

傷があると書かれた確認書へ署名すると費用負担も認めたことになりますか?

書面の文言によります。「傷が存在することの確認」と「その修繕費を借主が負担することへの合意」は同じとは限りません。実際の文書内容を確認してください。

立会いで追加工事を求められたらどうしますか?

対象箇所、契約・特約との関係、必要工事、期限、費用負担を確認し、記録します。施工会社にも内容を共有します。

退去費用は立会い当日に確定しますか?

物件によります。立会い後に見積や精算書が届くケースもあります。立会い当日の確認事項と最終金額の承認を分けて確認してください。

オフィス退去では何を追加確認しますか?

OAフロア・LAN等の配線、パーティション、ビル設備、入館カード、カードキー、警備タグ、共用部などを確認します。

貸主が立会いに来ない場合はどうしますか?

管理会社の指定する写真・完了報告・鍵返却方法に従います。返却時点の店舗・オフィス状態を借主側でも記録してください。

退去立会いでは「見たこと・合意したこと・未確定なこと」を分ける

退去立会いで最も重要なのは、その場ですべてを決めることではありません。

物件を見て確認した事実と、追加工事について合意した内容と、まだ費用や負担が決まっていない事項を分けて記録することです。

立会い当日は、

  1. 契約と返還条件を確認する
  2. 物件状態を確認する
  3. 指摘箇所を写真・書面へ残す
  4. 追加工事の内容を整理する
  5. 確認書の意味を確認して署名する
  6. 鍵・カード等を返却する
  7. 立会い後の是正・精算予定を確認する

という順序で整理すると、明け渡し後の認識違いを減らしやすくなります。

店舗の明け渡し全体は店舗の明け渡し手順、オフィスはオフィス退去の手順も確認してください。

退去立会いまでに原状回復が終わらない、追加工事を指摘された、明け渡し期限までの工程を整理したい場合は、お問い合わせから物件種別、立会い日、現在の工事状況などをお知らせください。

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