原状回復の完了検査では何を確認する?店舗・オフィスのチェックリスト

店舗やオフィスの原状回復工事が終わったら、そのまま鍵を返して退去完了とは限りません。

貸主・管理会社へ物件を明け渡す前に、契約で決めた返還状態まで工事が完了しているかを現場で確認し、撤去漏れや補修漏れがあれば是正する工程があります。

本記事では、この引渡し前の完成確認を「原状回復の完了検査」として扱います。

確認するのは、見た目がきれいかどうかだけではありません。

契約書、原状回復特約、貸主からの返還指示、図面、工事区分、見積・仕様と、実際の完成状態が一致しているかを一つずつ確認することが重要です。

目次

原状回復の完了検査とは

原状回復の完了検査は、施工した原状回復工事が、事前に合意した範囲・仕様まで完成しているかを明け渡し前に確認する工程です。

物件によって名称は異なり、

  • 完了検査
  • 完成検査
  • 引渡し確認検査
  • 竣工確認
  • 完工確認
  • 貸主検査

などと呼ばれることがあります。

呼び方よりも、その検査で誰が何を確認し、指摘事項が出た場合にいつまでに直す必要があるのかを把握することが重要です。

建築基準法上の「完了検査」とは別に考える

注意したいのが、「完了検査」という言葉には別の意味もあることです。

建築基準法では、一定の建築工事が完了した際に、建築基準関係規定へ適合しているかを確認する法定の完了検査があります。

一方、本記事で扱うのは、店舗・オフィス退去時の原状回復工事について、貸主・管理会社・借主・施工会社などが完成状態を確認する実務上の検査です。

通常の内装原状回復で行う引渡し確認と、建築基準法上の検査は同じ制度ではありません。

改修内容によって建築確認等の法定手続が必要な工事を行っている場合は、施工会社・設計者・管理会社等へ別途確認してください。

退去立会いと完了検査の違い

退去立会いと原状回復の完了検査は、同じ日に行われることもありますが、目的を分けて考えると整理しやすくなります。

工程 主な目的
原状回復の完了検査 施工した工事が合意範囲・仕様どおり完成しているか確認する
退去立会い 退去時の物件状態、残置物、貸与物、追加指摘等を貸主・借主双方で確認する
明け渡し 契約上必要な手続きを終え、物件の占有を貸主へ返す

完了検査で施工漏れが見つかれば是正工事を行い、その後に再確認してから退去立会い・鍵返却へ進むケースがあります。

退去立会いについてはテナント退去の立会いチェックリストも確認してください。

完了検査はいつ行う?

原状回復工事が終わった直後に確認しますが、契約終了日・明け渡し日ぎりぎりに初回検査を設定すると、指摘事項を直す時間がなくなる可能性があります。

検査日を決めるときは、

  • 工事完了予定日
  • 貸主・管理会社の検査可能日
  • B工事・指定業者の完了予定日
  • 是正工事に使える日数
  • 再確認日
  • 明け渡し日
  • 契約終了日

を逆算します。

「契約終了日の何日前」という全国共通の期限があるわけではありません。

物件側から検査日を指定されることもあるため、工事着工前の段階で確認しておくと安全です。

完了検査に参加する人

物件や工事区分によって異なりますが、次の関係者が参加することがあります。

  • 借主側の店舗責任者・総務・移転担当者
  • 貸主
  • 管理会社
  • ビル管理会社
  • 原状回復工事の施工会社
  • B工事・指定業者の担当者
  • 設計・PM担当者

複雑な原状回復では、借主担当者だけでなく工事内容を説明できる施工会社担当者が参加すると、その場で指摘内容を確認しやすくなります。

完了検査までに用意しておきたい資料

資料 確認する目的
賃貸借契約書 返還条件・原状回復義務を確認する
原状回復特約 通常条項とは別の工事範囲を確認する
貸主・管理会社の工事指示書 今回の具体的な完成状態を確認する
工事区分表 A工事・B工事・C工事の担当を確認する
入居時図面 変更前の状態を確認する
原状回復図面 撤去・復旧位置を確認する
見積書・工事範囲表 発注した工事項目を確認する
仕様書 材料・仕上げ・設備仕様を確認する
施工写真 完成後に見えない部分を確認する
変更・追加指示の記録 着工後に変更した工事範囲を確認する

「原状回復一式」という見積だけでは、完成状態との照合が難しくなります。

見積の確認方法については内装解体の見積内訳も参考になります。

完了検査で確認する10項目

1.工事範囲どおりに撤去されているか

最初に確認するのは撤去漏れです。

  • 借主設置の間仕切り
  • 造作家具
  • 棚・什器
  • 看板
  • 照明
  • 配線
  • 厨房設備
  • 借主増設設備

など、撤去対象として合意していた物が残っていないか確認します。

反対に、貸主所有設備や「残す」と合意した設備まで撤去していないかも確認します。

2.床・壁・天井の補修が完了しているか

造作や設備を撤去すると、固定跡や開口部が残ります。

次のような箇所を確認します。

  • 床のアンカー・ビス跡
  • 接着剤・テープ跡
  • 壁の穴・開口
  • 天井の吊り元・固定跡
  • パーティション撤去跡
  • 配管・配線貫通部
  • 塗装・クロス等の仕上げ

単に撤去されているだけでなく、契約で求められた仕上げまで戻っているかを見ます。

3.電気・通信設備の処理を確認する

オフィスや店舗では、内装だけでなく電気・通信設備の復旧が必要になることがあります。

  • 増設コンセント
  • 分電盤
  • 照明
  • LAN配線
  • 電話配線
  • OAフロア内配線
  • 看板電源

について、撤去する範囲と残す範囲が指示どおりか確認します。

4.空調・防災設備を確認する

空調、防災、消防設備はビル側設備とつながっていることがあり、B工事・指定業者工事になる場合があります。

確認対象としては、

  • 空調機
  • 吹出口・吸込口
  • ダクト
  • 火災報知器
  • スプリンクラー
  • 誘導灯
  • 非常照明

などがあります。

工事区分の考え方はB工事とは何かも確認してください。

5.給排水・ガスの処理を確認する

飲食店、美容室、クリニックなどでは特に重要です。

  • 給水管
  • 排水管
  • ガス管
  • 排水口
  • 給湯設備

について、撤去・閉栓・復旧方法が貸主の指示どおりかを確認します。

6.店舗固有の設備を確認する

店舗では業態によって確認項目が増えます。

飲食店なら、

  • 厨房機器
  • 厨房土間
  • 防水
  • グリストラップ
  • フード
  • 厨房ダクト
  • 排気ファン
  • 看板
  • 屋外設備

などです。

店内だけを見て、屋上や外壁側にダクト・ファン・看板配線等が残っていることを見落とさないようにします。

7.オフィス固有の設備を確認する

オフィスでは、

  • パーティション
  • OAフロア
  • 床下配線
  • 会議室造作
  • 受付造作
  • AV設備
  • ネットワーク設備
  • 借主増設の電源

などを確認します。

原状回復の範囲が複雑な場合は、オフィス原状回復の見積確認も参考になります。

8.残置物・仮設物が残っていないか

工事そのものが完成していても、現場に物が残っていれば明け渡し時に指摘されることがあります。

  • 廃材
  • 工具
  • 脚立
  • 養生材
  • 施工会社の資材
  • 借主の什器・備品
  • 清掃用品
  • 梱包材

などを確認します。

居抜きや残置承諾がある物は、撤去漏れと混同しないよう設備一覧等で確認します。

9.専有部だけでなく共用部も確認する

搬出・解体工事では、廊下、エレベーター、搬入口などの共用部を使用します。

養生撤去後に、

  • エレベーター
  • 搬入口
  • 共用扉

などに今回の工事で生じた損傷がないか確認します。

工事前に共用部写真を残している場合は照合できます。

10.清掃・最終仕上げまで完了しているか

撤去・補修が終わっても、粉じん、テープ跡、廃材片、汚れが残っていることがあります。

契約上求められる清掃範囲に沿って最終確認します。

施工会社が「工事完了」と考える状態と、貸主側が「引渡し可能」と考える状態が違うことがあるため、清掃も完成条件に含めて確認します。

検査は「図面どおり」だけでなく変更記録も確認する

工事中には、貸主・管理会社の指示で工事内容が変わることがあります。

たとえば、

  • 撤去予定だった設備を残す
  • 追加で配線を撤去する
  • 床補修方法を変更する
  • 指定業者側の工事へ変更する
  • 居抜き承継が途中で認められる

などです。

当初図面だけを見て検査すると、変更済みの内容まで「施工漏れ」と判断される可能性があります。

メール、議事録、変更指示書なども一緒に確認してください。

指摘事項は「パンチリスト」のように一覧化する

完了検査で複数の指摘が出た場合、口頭だけで管理すると漏れやすくなります。

次の項目を一覧にすると整理しやすくなります。

項目 記録内容
場所 区画・部屋・壁面・設備など
現状 何が未完了・不具合なのか
求める状態 何をどう直すのか
根拠 図面・仕様・契約・貸主指示など
担当 どの施工会社・指定業者が対応するか
期限 いつまでに是正するか
費用 元契約内か追加工事か未確定か
確認 再検査方法・完了確認者

各指摘箇所には写真番号を振っておくと、施工会社との共有が容易になります。

「是正工事」とは

完了検査で見つかった未施工、不具合、仕上げ不足などを修正する工事を、実務上「是正工事」「手直し工事」などと呼ぶことがあります。

たとえば、

  • 撤去予定の配線が残っている
  • 壁の補修が不十分
  • 塗装にムラがある
  • 床補修が指定状態と違う
  • 設備の復旧が終わっていない
  • 清掃が不足している

といったケースです。

是正が終わったら、必要に応じて再確認を行います。

是正工事はすべて追加費用になるわけではない

完了検査で指摘が出たからといって、そのすべてが借主への追加請求になるとは限りません。

まず次の3つに分けます。

当初発注範囲の施工漏れ

見積・工事範囲に入っていたにもかかわらず施工されていない場合です。

施工会社との請負契約や見積内容を確認し、元契約内の手直しとして扱うのかを確認します。

施工したが完成状態を満たしていない

仕上げ不良や施工不良など、工事品質の問題として是正するケースです。

どの仕様を満たしていないのかを明確にします。

当初の工事範囲外だったもの

検査時に初めて貸主から追加要求が出た場合などです。

この場合は、

  • なぜ当初範囲に入っていなかったのか
  • 契約上本当に必要な工事なのか
  • 貸主の新しい仕様変更なのか
  • 追加費用はいくらか

を確認してから発注します。

追加費用については内装解体の追加費用も参考になります。

貸主の指摘=すべて即承認ではない

完了検査では、貸主・管理会社から追加の指摘が出ることがあります。

その指摘が合理的かどうかを、その場で感覚だけで判断する必要はありません。

確認するのは、

  1. どの箇所か
  2. 現在どうなっているか
  3. 契約・特約・事前指示のどこに基づくか
  4. 求める完成状態は何か
  5. 誰が工事するか
  6. 明け渡しまでに間に合うか
  7. 費用負担は誰か

です。

指摘事項自体には同意していても、費用負担や追加金額は未確定というケースもあります。

現況確認と金額承認を分けて記録すると整理しやすくなります。

B工事・指定業者がある場合は誰が是正するかを分ける

オフィスビルや商業施設では、借主が依頼した施工会社だけで原状回復工事が完結しない場合があります。

空調・防災・電気・共用設備等がB工事や指定業者工事になっている場合、完了検査で指摘された内容がどの工事区分に属するかを確認します。

たとえば、

  • C工事業者の施工漏れ
  • B工事業者の復旧未完了
  • 管理会社側の設備確認待ち

を混同すると、是正手配が遅れます。

誰に修正依頼を出すのかをその場で明確にしてください。

完了写真を残す

検査時には完成状態を撮影しておきます。

特に、

  • 店舗・オフィスの全景
  • 天井
  • 設備
  • 配線
  • 配管
  • 撤去した造作跡
  • 屋外・屋上設備
  • 共用部

を残します。

是正前と是正後を同じ角度で撮影しておくと、再確認もしやすくなります。

完成後に見えなくなる部分は施工写真で確認する

原状回復では、完成後に見えなくなる作業もあります。

たとえば、

  • OAフロア下の配線
  • 天井内の設備
  • 配管の閉栓処理
  • 壁内の補修

などです。

完成後に目視できない部分は、必要に応じ施工中写真や完了報告書で確認します。

検査終了時に確認すること

現場を一周して終わりではなく、最後に次を整理します。

  • 指摘事項は何件あるか
  • 是正が必要な項目
  • 是正担当者
  • 完了期限
  • 追加費用の有無
  • 再検査が必要か
  • 写真確認だけでよい項目があるか
  • 最終明け渡し日は変わらないか

指摘ゼロであれば、そのことが分かる完了報告やメールなどを残しておくと後から確認しやすくなります。

検査で指摘が残ったまま明け渡せるか

これは物件・契約・指摘内容によって異なります。

貸主が是正完了を明け渡し条件としているなら、期限までに完了させる必要があります。

一方、軽微な是正について貸主と別途日程を合意できる場合もあります。

借主側だけで「小さな指摘だから後で直せばよい」と判断せず、

  • 明け渡しを認めるか
  • 鍵を返却してよいか
  • 是正工事のための再入館方法
  • 賃料・遅延損害等への影響

を貸主・管理会社と確認します。

完了検査から明け渡しまでの流れ

  1. 施工会社の自主検査
  2. 原状回復工事の完了
  3. 貸主・管理会社等との完了検査
  4. 指摘事項の一覧化
  5. 是正工事
  6. 再確認・再検査
  7. 完了状態の記録
  8. 退去立会い
  9. 鍵・カード等の返却
  10. 物件明け渡し

実際の順序は物件によって異なり、完了検査と退去立会いを同日に行うこともあります。

店舗の全体工程は店舗の明け渡し手順、オフィスはオフィス退去の手順も確認してください。

原状回復完了検査のチェックリスト

  • 契約書・特約を確認した
  • 貸主の返還指示を確認した
  • 工事区分表を確認した
  • 図面・見積・仕様を用意した
  • 変更指示の記録を整理した
  • 撤去漏れがない
  • 残してよい設備を誤撤去していない
  • 床・壁・天井の補修が完了している
  • 電気・通信設備の処理が完了している
  • 空調・防災設備の復旧が完了している
  • 給排水・ガスの処理を確認した
  • 店舗固有設備を確認した
  • オフィス固有設備を確認した
  • 残置物・仮設物がない
  • 共用部を確認した
  • 清掃が完了している
  • 完成写真を撮影した
  • 指摘事項を一覧化した
  • 是正担当・期限を決めた
  • 元契約内の是正と追加工事を分けた
  • 再確認方法を決めた
  • 明け渡し日への影響を確認した

原状回復の完了検査でよくある質問

完了検査は誰が行いますか?

物件によります。貸主、管理会社、ビル管理会社、借主、原状回復業者、B工事業者などが参加する場合があります。管理会社へ参加者を事前確認してください。

退去立会いと同じですか?

同日に行うケースはありますが、目的を分けて考えた方が整理しやすくなります。完了検査は工事の完成状態、退去立会いは退去時の物件状態や貸与物等の確認が中心です。

契約終了日の何日前に検査すればよいですか?

全国一律の日数はありません。指摘が出た場合の是正期間を確保できるよう、工事完了予定日・管理会社の予定・明け渡し日から逆算します。

完了検査で追加工事を言われたら全部払う必要がありますか?

一律には判断できません。元の工事範囲の施工漏れ・施工不良なのか、契約上必要だが当初見積から漏れていたのか、貸主から新たに追加された工事なのかを分けて確認します。

是正工事とは何ですか?

完了確認で見つかった施工漏れ、不具合、未完了部分などを修正する工事です。是正後に再確認を行う場合があります。

是正工事は必ず追加料金ですか?

必ずではありません。当初契約に含まれていた施工の手直しなのか、契約外の追加工事なのかで扱いが変わります。施工会社との契約・見積を確認してください。

指摘事項は口頭だけでもよいですか?

場所・内容・求める状態・期限などを写真とともに書面やメールで残した方が、施工会社との認識違いを防ぎやすくなります。

完了検査に通らないと鍵を返せませんか?

物件の明け渡し条件によります。是正未完了でも別途合意の上で明け渡せる場合もありますが、借主側だけで判断せず貸主・管理会社へ確認してください。

建築基準法の完了検査と同じですか?

本記事で扱う原状回復工事の引渡し確認とは別です。建築基準法上の完了検査は、対象となる建築工事について法令適合性を確認する制度です。

原状回復は「工事終了」ではなく「確認・是正完了」まで管理する

施工会社から「工事が終わりました」と連絡が来ても、それだけで貸主への明け渡し条件を満たしたとは限りません。

原状回復の完了時には、

  1. 契約・図面・工事範囲と完成状態を照合する
  2. 撤去・補修・設備復旧を確認する
  3. 残置物・共用部・清掃を確認する
  4. 指摘事項を写真と一覧で残す
  5. 元契約内の手直しと追加工事を分ける
  6. 是正する
  7. 再確認する
  8. 退去立会い・明け渡しへ進む

というところまで一つの工程として管理すると、退去期限直前の追加工事や認識違いを減らしやすくなります。

完了検査で複数の指摘が出た、是正工事が明け渡し期限に間に合わない、元契約内の手直しか追加工事か判断できない場合は、お問い合わせから物件種別、明け渡し日、検査指摘内容、現在の工事状況などをお知らせください。

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