テナントの退去精算書はどこを見る?敷金・原状回復費・返還額の確認点

店舗やオフィスを明け渡した後、貸主・管理会社から「退去精算書」「敷金精算書」「解約精算書」などが届くことがあります。

書類には、預けていた敷金・保証金、返金される賃料、償却、未払賃料、原状回復費、その他の控除、最終的な返還額などがまとめられています。

ただし、書類の一番下に書かれた「返還額」だけを確認して終わるのは避けた方がよいでしょう。

店舗・オフィスの退去では、償却と原状回復費が別々に計上されたり、借主側が既に支払った工事費と精算書の控除が重なったりすることがあります。

退去精算書は、預けた金額、返金される金額、控除される金額、税区分を一つずつ分解して確認すると間違いを見つけやすくなります。

目次

退去精算書とは

退去精算書は、賃貸借契約終了後に、貸主・管理会社と借主の間で最終的にいくら返還・請求するのかを整理する書類です。

物件によって、

  • 退去精算書
  • 敷金精算書
  • 保証金精算書
  • 解約精算書
  • 退去費用明細書

など名称は異なります。

全国で統一された一つの書式があるわけではありません。

そのため書類名より、何の金額がどのように計算されているかを確認します。

退去精算書は4つに分けて読む

複雑に見える精算書も、大きく分けると次の4つです。

区分 主な内容
預り金 敷金・保証金等
借主への返金 敷金返還、過払い賃料等
借主負担の控除 償却、未払賃料、原状回復費等
最終精算 返還額または追加請求額

まず各項目をこの4つへ分けてから計算します。

1.最初に預けた敷金・保証金の金額を確認する

最初に確認するのは精算のスタート地点となる預託額です。

賃貸借契約書と精算書を比較して、敷金・保証金の金額が一致しているか確認します。

ただし、契約期間中に、

  • 賃料増額に伴う敷金追加
  • 保証金の追加預託
  • 一部返還
  • 契約変更

があった場合は、当初契約書の数字だけでは現在残高が分からないことがあります。

経理帳簿や追加契約書、振込記録も照合してください。

2.借主へ返金される項目を確認する

返金対象は敷金・保証金だけとは限りません。

解約日との関係で賃料や共益費を前払いしている場合、過払い分が精算されることがあります。

精算書では、

  • 返還対象となる敷金・保証金
  • 過払い賃料
  • 過払い共益費
  • その他の預り金

などを確認します。

反対に、最終月を日割りにするのか月額全額とするのかは契約によって異なるため、自己判断で日割り返金を前提にしないようにします。

3.契約上の償却・敷引きを確認する

事業用賃貸では、敷金・保証金の一部を退去時に返還しない「償却」「敷引き」が設定されている場合があります。

たとえば、

  • 解約時1か月償却
  • 解約時2か月償却
  • 保証金20%償却
  • 固定額100万円償却

などです。

精算書に償却がある場合は、契約書の償却条項と金額が一致しているか確認します。

償却の計算方法は事業用の敷金・保証金の償却で詳しく整理しています。

4.未払賃料・共益費を確認する

契約終了時点で未払賃料や共益費があれば、敷金等の精算時に控除されることがあります。

確認するのは、

  • 対象月
  • 賃料
  • 共益費
  • 日割り計算の有無
  • 既に支払った振込との重複

です。

退去直前に通常どおり口座振替され、その後精算されるケースなどでは、入出金のタイミングがずれることがあります。

銀行口座の実際の支払履歴と照合してください。

5.原状回復費は工事明細まで確認する

店舗・オフィス退去では、精算額を大きく左右するのが原状回復費です。

精算書に「原状回復費 150万円」とだけ記載されている場合は、何に対する費用なのか確認します。

確認したいのは、

  • 工事項目
  • 施工箇所
  • 数量
  • 単価
  • 工事区分
  • 追加工事の有無
  • 消費税

です。

原状回復費を敷金から差し引く場合の確認方法は事業用の敷金から原状回復費を差し引く場合の確認点も参照してください。

借主が既に支払った原状回復費と重複していないか

借主自身が原状回復業者へ直接工事を発注したケースでは、特に注意が必要です。

たとえば借主が施工会社へ300万円を支払い済みなのに、精算書にも同じ工事について300万円が控除されていれば、そのままにせず内容を確認します。

ただし、貸主側で別途、

  • B工事
  • 指定業者工事
  • 追加是正
  • 借主工事の未施工部分

を行っている可能性もあります。

「原状回復費」という同じ名前だから重複、あるいは別請求だから重複ではない、と判断せず、工事項目を照合してください。

6.残置物撤去・清掃などの追加費用を確認する

明け渡し時に借主の物が残っていた場合、貸主側で撤去した費用が精算されることがあります。

店舗なら、

  • 什器
  • 厨房機器
  • 在庫
  • 看板
  • 廃材

オフィスなら、

  • デスク
  • 書庫
  • OA機器
  • 配線
  • 書類

などです。

ただし、居抜きで残すことを承諾された設備や貸主所有物まで「残置物」として撤去費が請求されていないか確認します。

7.中途解約の違約金・予告期間不足を確認する

契約期間途中の解約や、解約予告期間を満たさない退去では、契約に基づく違約金・解約予告金等が精算書へ記載される場合があります。

確認するのは、

  • どの契約条項に基づくか
  • 賃料何か月分か
  • 既に別途支払っていないか
  • 即時解約予告金なのか違約金なのか

です。

オフィスの中途解約費用についてはオフィス退去の違約金も確認してください。

8.消費税は項目ごとに確認する

退去精算書では、すべての項目に同じ消費税処理を当てはめることはできません。

項目 基本的な税務上の整理
返還される敷金・保証金 課税対象外
事業用建物で返還しない敷金・保証金等 課税対象
貸主が行う原状回復工事費を保証金等から控除 課税対象
中途解約による逸失利益補填型の違約金 損害賠償金として課税対象外となる場合

実際には、書類上の名称だけでなく、その金銭が何の対価なのかによって税務上の扱いが決まります。

「退去費用だから全部消費税10%」「違約金だから全部非課税」といった確認方法は避けます。

税務上の判断が必要な金額については、契約書・請求書・精算書を経理担当者や税理士へ共有してください。

退去精算書の計算は自社でもやり直す

精算書を受け取ったら、記載された最終額だけを見るのではなく、自社でも再計算します。

基本的には、

返還額 = 預託敷金・保証金 + その他返金額 − 償却等 − 未払債務 − 原状回復費等 − その他控除

として整理できます。

たとえば精算書上、

  • 預託保証金:5,000,000円
  • 償却:550,000円
  • 未払賃料等:330,000円
  • 原状回復費:1,100,000円

で、その他の返金・控除がなければ、

5,000,000 − 550,000 − 330,000 − 1,100,000 = 3,020,000円

が返還額です。

このように各項目を別々に入力して検算すると、単純な足し引きの誤りも見つけられます。

敷金・保証金より控除額が多い場合

原状回復費や未払債務等の合計が敷金・保証金を上回る場合、返還額がゼロになるだけでなく、不足分を追加請求されることがあります。

たとえば、

  • 預託敷金:2,000,000円
  • 各種控除合計:2,500,000円

なら、単純計算では500,000円の不足です。

ただし、追加請求されている各項目についても契約上の負担根拠と金額を確認してください。

精算書に原状回復費の明細がない場合

「原状回復費一式」としか書かれておらず内容が確認できない場合は、工事明細・見積書・請求書など、金額の根拠となる資料を確認します。

見るべきなのは、

  • 施工内容
  • 数量
  • 単価
  • 借主負担となる理由
  • 工事済みか未施工か
  • 追加工事の場合は追加理由

です。

総額だけを見て「高い」「安い」と判断するより、項目ごとに分けた方が確認しやすくなります。

退去立会いの確認書と精算書を照合する

退去立会いで指摘された箇所が、後日の精算書に反映されることがあります。

そのため、

  • 退去立会い確認書
  • 指摘箇所の写真
  • 是正工事記録
  • 原状回復完了検査
  • 最終精算書

を並べて確認します。

立会いでは指摘されていなかった大きな工事費が後から追加されている場合は、その理由を確認します。

原状回復の完了検査も参考になります。

精算書と契約書を照合する項目

精算書の項目 主に照合する資料
敷金・保証金 賃貸借契約書・追加預託記録
償却 償却・敷引き特約
未払賃料 賃料条項・入出金記録
原状回復費 原状回復条項・見積・請求書
残置物撤去 明け渡し記録・写真
違約金等 中途解約・解約予告条項
最終返還額 各項目を自社で再計算

退去精算書で特に確認したい二重計上

次のような組み合わせは、内容が重複していないか確認します。

  • 借主が支払い済みの原状回復費+精算書の原状回復費
  • 支払い済みB工事費+精算書のB工事費
  • 償却+同じ目的と説明された別控除
  • 既に振込済みの賃料+未払賃料
  • 既に支払い済みの違約金+精算書の違約金
  • 退去前に支払った残置物撤去費+精算書の撤去費

名前が似ているだけで重複とは限りませんが、同じ内容を二度負担していないか確認します。

精算書の数字が合わないときの確認順序

  1. 敷金・保証金の預託額を確定する
  2. 返金項目を合計する
  3. 償却額を契約書から再計算する
  4. 未払賃料・共益費を入出金履歴と照合する
  5. 原状回復費を見積・請求書と照合する
  6. その他控除の契約上の根拠を確認する
  7. 消費税を項目ごとに確認する
  8. 最終返還額を再計算する

一つずつ確認すると、どの段階で金額が合わなくなったのか特定できます。

退去精算書を受け取ったら残しておく資料

退去精算が終わった後も、少なくとも次の資料はまとめて保管します。

  • 賃貸借契約書
  • 解約通知
  • 原状回復見積書
  • 追加工事見積
  • 原状回復請求書
  • 工事完了報告・写真
  • 退去立会い確認書
  • 敷金・保証金の預託記録
  • 退去精算書
  • 返金の入金記録
  • 追加請求の支払記録

経理・税務処理だけでなく、後から精算内容を確認する必要が生じた場合にも役立ちます。

テナントの退去精算書でよくある質問

退去精算書と敷金精算書は違いますか?

名称は管理会社・貸主によって異なります。敷金返還だけを扱う書類もあれば、賃料・原状回復費・その他控除までまとめた退去精算書もあります。書類名より記載内容を確認してください。

精算書が届いたら記載額をそのまま受け入れる必要がありますか?

まず契約書・入出金記録・工事明細等と照合してください。不明な控除があれば、何に対する金額なのか確認します。

敷金の償却と原状回復費は両方書かれていてもよいですか?

契約によっては別項目として両方発生します。それだけで二重控除とは判断できません。償却条項と原状回復費の内容を分けて確認してください。

原状回復費の明細を確認した方がよいですか?

特に金額が大きい場合は、工事項目・数量・単価・追加工事等を確認できる資料と照合すると精算内容を把握しやすくなります。

敷金が返ってこないだけでなく追加請求されることはありますか?

借主が負担する債務の合計が敷金・保証金を上回れば、不足分が追加請求される場合があります。追加請求についても各項目の根拠を確認してください。

返還される敷金にも消費税がかかりますか?

事業用建物の敷金・保証金でも、契約終了時に返還される部分は消費税の課税対象ではありません。

償却部分には消費税がかかりますか?

事業用建物の賃貸借に伴う敷金・保証金等のうち、契約上返還しない部分は消費税の課税対象になります。

違約金には消費税がかかりますか?

違約金という名称だけでは決まりません。たとえば中途解約による逸失利益を補填する損害賠償金としての違約金は課税対象外とされていますが、実際の金銭の性質を確認する必要があります。

精算書の計算が合わない場合はどうしますか?

預託金、返金、償却、未払債務、原状回復費、その他控除、消費税を別々に再計算し、どの項目で差が生じているかを特定します。

退去精算書は「最終返還額」ではなく途中の計算を見る

店舗・オフィスの退去精算では、最終返還額だけを見ても、その金額が正しいか判断できません。

確認する順序は、

  1. 敷金・保証金の預託額
  2. 借主へ返す金額
  3. 契約上の償却
  4. 未払賃料・共益費
  5. 原状回復費
  6. 残置物撤去等
  7. 違約金その他の控除
  8. 消費税
  9. 最終返還額または追加請求額

です。

各項目を契約書、見積、請求書、入出金記録と照合し、最後に計算をやり直すことで、単純な計算ミスだけでなく二重控除や不明な費用も見つけやすくなります。

店舗の敷金については店舗の敷金返還、オフィスはオフィスの敷金返還もあわせて確認してください。

退去精算書を受け取ったものの控除項目が分からない、原状回復費が見積と一致しない、返還額を検算したい場合は、お問い合わせから契約条件、預託額、精算書の内容などをお知らせください。

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