オフィスを移転・退去するとき、インターネット回線は「旧オフィスを出る日に解約すればよい」とは限りません。
新オフィスへの回線移転・開通、固定電話、サーバーやネットワーク機器、光回線の撤去、ONU・ホームゲートウェイなどの返却、原状回復工事まで関係するためです。
さらに、賃貸オフィスでは「回線を残して退去してよい物件」と「退去時に撤去を求められる物件」があります。
オフィスのネット回線は、最初に管理会社へ撤去条件を確認し、その後で契約・新拠点への移行・旧回線の終了を組み立てると進めやすくなります。
オフィスのインターネットは退去日に解約すればよいとは限らない
ネット回線の停止日は、社員が旧オフィスを離れる日だけで決めない方がよいでしょう。
旧オフィスでは、社員の移転後にも、
- サーバーやNASのデータ移行
- ネットワーク機器の停止
- クラウド・VPN等の接続確認
- 固定電話・IP電話の切替
- 監視カメラ・入退室設備の停止
- OA機器の撤去
- 通信配線の撤去
などが残っている場合があります。
新オフィスの通信環境が安定する前に旧回線を止めると、業務停止につながる可能性があります。
最初に「解約」か「移転」かを決める
現在の回線を旧オフィスで終了する場合でも、手続きは大きく2通りあります。
現在のサービスを新オフィスでも利用する
回線事業者が移転先でもサービスを提供できる場合は、移転手続きを利用できることがあります。
この場合でも、旧オフィス側の撤去工事と新オフィス側の開通工事を別々に調整する必要がある場合があります。
旧回線を解約し、新オフィスで新規契約する
新オフィスで別回線を利用する場合や、サービス・回線事業者を変更する場合です。
この場合は、旧契約の解約条件と新契約の開通日を別々に管理します。
旧回線を止める前に新オフィスの開通日を確定する
オフィス移転では、旧回線の解約より先に新オフィスの通信環境を固めることが重要です。
新拠点で、
- 光回線が利用できるか
- 開通工事が必要か
- 工事まで何日かかるか
- ビル指定の通信事業者があるか
- 新規配線工事の申請が必要か
を確認します。
オフィス移転では、回線工事が社員の入居日に間に合わないと業務へ直接影響します。
一定期間、旧オフィスと新オフィスの両方の回線契約が重なっても、業務継続を優先した方がよい場合があります。
回線撤去が必要か管理会社へ先に確認する
賃貸オフィスでは、インターネット契約を解約したからといって、必ず光ファイバーや光コンセントまで撤去するとは限りません。
反対に、借主が入居時に設置した通信設備について、退去時の撤去を求められる場合もあります。
解約申込みをする前に、貸主・管理会社へ、
- 光回線の引込線を残してよいか
- 光コンセントを残してよいか
- 室内配線を撤去する必要があるか
- 通信ラック内の配線を撤去するか
- LAN配線を撤去するか
- 撤去工事に指定業者があるか
を確認してください。
「退去だから全部撤去」「次のテナントも使えるから必ず残す」のどちらとも一律には判断できません。
管理会社への確認は回線解約前に行う
回線を先に解約してしまい、その後に管理会社から「配線も撤去してください」と言われると、改めて工事調整が必要になる可能性があります。
逆に、通信会社へ撤去工事を依頼した後で管理会社から「回線は残置してください」と言われることも避けたいところです。
順序としては、
- 賃貸借契約・原状回復条件を確認する
- 管理会社へ通信回線の撤去条件を確認する
- 回線事業者へ解約・移転を相談する
- 必要なら撤去工事日を調整する
と進めます。
回線契約とプロバイダ等の契約を棚卸しする
法人のインターネット環境は、必ずしも一つの契約だけで構成されているわけではありません。
たとえば、
- 光回線
- プロバイダ
- 固定IPアドレス
- IP電話・ひかり電話
- VPN
- ルーターレンタル
- セキュリティサービス
- クラウドPBX
などを別々に契約している場合があります。
回線本体を解約しても、他社サービスが自動解約されないケースがあります。
請求書、契約一覧、経理の支払先一覧から旧拠点に紐づく通信契約を洗い出してください。
「毎月払っている通信会社」を一覧にすると漏れを見つけやすい
| 確認項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| サービス名 | 光回線、プロバイダ、固定電話等 |
| 契約先 | 通信事業者・販売代理店等 |
| 契約番号 | お客さまID等 |
| 契約名義 | 法人名・拠点名 |
| 終了方法 | 移転・解約・継続 |
| 最終利用日 | 旧拠点で最後に利用する日 |
| 撤去工事 | 必要・不要・確認中 |
| 機器返却 | 返却対象と期限 |
解約日と回線撤去工事日は同じとは限らない
通信サービスの最終利用日と、物理的な回線撤去工事日は別になる場合があります。
たとえば、
- ○月20日までネットを利用
- ○月21日にサービス終了
- ○月25日に撤去工事
- ○月30日に物件明け渡し
という工程も考えられます。
回線事業者へは、「いつまで通信が必要なのか」と「いつ撤去工事できるのか」を分けて伝える方が整理しやすくなります。
撤去工事が不要で機器返却だけになる場合もある
解約時に通信事業者が必ず現地へ来るとは限りません。
設備条件によっては、回線設備を残置し、借主がONUやホームゲートウェイなどのレンタル機器を取り外して返却するだけで解約が完了するケースがあります。
一方、建物条件や管理会社からの指定などによって、通信事業者による訪問撤去工事が必要になる場合もあります。
管理会社と回線事業者双方の確認結果を合わせて判断してください。
2026年以降は撤去工事費も確認する
回線によっては、訪問を伴う撤去工事に料金が発生する場合があります。
たとえばNTT東日本では、2026年4月以降の解約申込みについて、利用者の希望や物件都合により担当者が訪問する撤去工事を行う場合に撤去工事費を設定しています。
一方、担当者が訪問せず、レンタル機器を利用者が返却する形では扱いが異なります。
費用・条件は回線事業者や契約によって異なるため、実際の解約時点で確認してください。
ONU・ホームゲートウェイ・ルーターは所有者を確認する
ネットワークラック周辺にある通信機器を、まとめて自社所有と判断しないよう注意してください。
たとえば、
- ONU
- ホームゲートウェイ
- 光BBユニット
- レンタルルーター
- 無線LANカード
などは通信事業者からの貸与品の場合があります。
一方、自社で購入したルーター、スイッチ、Wi-Fiアクセスポイントなどは自社資産の可能性があります。
機器ごとに所有者を確認します。
機器を勝手に廃棄しない
原状回復業者へ「通信ラックの中を全部処分してください」と依頼すると、レンタル機器まで廃棄してしまう可能性があります。
撤去前に、
- 自社所有
- 回線事業者所有
- プロバイダ所有
- ビル設備
へ分けてラベルを付けると安全です。
返却対象機器を紛失・廃棄した場合の扱いは契約先によって異なります。
NTT系機器とプロバイダ等の機器で返却先が違う場合がある
光回線では、一つのオフィス内に複数事業者の貸与機器が置かれていることがあります。
たとえば、ONUやホームゲートウェイは回線側、ルーター等は別のサービス事業者という場合です。
解約時は、各事業者から案内された返却対象と返却方法を確認し、それぞれ正しい返却先へ返します。
「通信機器を一箱にまとめて同じ会社へ返送する」とは限りません。
固定電話・ひかり電話を使っている場合はネット回線を先に止めない
オフィスの固定電話が光回線に紐づいている場合、インターネット回線の解約が電話サービスへ影響することがあります。
解約前に、
- 代表電話番号
- FAX番号
- フリーダイヤル等
- ひかり電話
- クラウドPBX
- 電話転送サービス
の移転・継続方法を確認してください。
新拠点で同じ電話番号を利用できるかは、利用サービスや移転先などによって異なります。
「同じ市区町村だから必ず同じ番号を使える」とも限らないため、通信事業者へ事前に確認します。
電話番号が変わる可能性があるなら早めに確定する
代表電話番号が変更になる場合は、ネット回線の切替だけでなく、
- Webサイト
- 名刺
- 会社案内
- 取引先
- 金融機関
- 各種届出
- Googleビジネスプロフィール等
への変更対応も必要になります。
そのため電話番号の確定は、移転直前まで残さない方がよいでしょう。
LAN配線と光回線は同じものではない
オフィス退去で混同しやすいのが、通信事業者の光回線と、オフィス内のLAN配線です。
たとえば、
- 建物から室内まで引き込まれた光ファイバー
- 光コンセント
- ONU
- ONU以降のLANケーブル
- 床下のLAN配線
- パーティション内のLAN配線
はそれぞれ所有者や撤去担当が異なる可能性があります。
通信事業者へ解約を申し込んだからといって、室内LANがすべて撤去されるわけではありません。
OAフロア・パーティション内のLANは原状回復範囲を確認する
オフィスでは、OAフロア下やパーティション内にLAN・電話配線が大量に敷設されていることがあります。
これらが借主施工で、契約上撤去対象なら、原状回復工事で撤去することになります。
一方、ビル側設備として残す配線も考えられます。
オフィスのパーティション撤去やオフィスの内装解体と同時に工事区分を確認してください。
通信回線を施工会社だけの判断で切断しない
光ファイバーや通信機器は、設備の所有者や契約状態を確認してから処理します。
原状回復工事の現場で「使っていない線だから」と自己判断で切断すると、
- 貸主設備
- 共用設備
- 他テナント設備
- 通信会社所有設備
へ影響する可能性があります。
回線事業者・管理会社・施工会社で撤去範囲を確認してください。
インターネットは原状回復工事より前に止める?後に止める?
ケースによります。
原状回復工事そのものにインターネット接続は必須ではないケースが多い一方、工事開始前までサーバーや通信設備を使う場合があります。
また、撤去工事のために通信事業者がオフィスへ入室するなら、原状回復完了前に実施する方が調整しやすいことがあります。
一般的には、
- 新オフィスの通信環境を準備する
- 社員・IT設備を移転する
- 旧回線の最終利用を終える
- 通信回線・レンタル機器を処理する
- 不要なLAN等を原状回復で撤去する
- 完了確認を行う
という順番で検討すると整理しやすくなります。
原状回復工事との日程を一本化する
通信回線の撤去工事と原状回復工事を別担当者が管理していると、日程が食い違うことがあります。
たとえば、原状回復工事で壁を塞いだ後に通信会社の撤去工事が必要と判明すると、再施工が必要になる可能性があります。
反対に、撤去する必要のない光設備を先に撤去してしまうことも避けたいところです。
退去工程表の中へ、
- ネット最終利用日
- 電話切替日
- 通信機器搬出日
- 回線撤去日
- LAN撤去日
- 原状回復工事
- 完了検査
を入れて管理します。
新オフィスのネット開通確認後に旧回線を終了する
新オフィスで回線工事が完了しただけで、すぐ旧回線を止めるのではなく、実際に業務で使える状態まで確認します。
少なくとも、
- インターネット接続
- 社内LAN
- Wi-Fi
- VPN
- 固定IP
- クラウドサービス
- 電話
- 複合機等のネットワーク機器
の動作確認を行います。
問題なく切替できたことを確認してから旧回線を停止すると、通信障害時のリスクを下げられます。
オフィスのネット解約チェックリスト
- 現在の回線事業者を確認した
- プロバイダ等の別契約を確認した
- 固定IP・VPN等のオプションを確認した
- 固定電話・ひかり電話を確認した
- 管理会社へ回線撤去の要否を確認した
- 光コンセントを残すか確認した
- LAN配線の原状回復範囲を確認した
- 新オフィスの開通日を確認した
- 新オフィスで通信テストをした
- 旧回線の最終利用日を決めた
- 回線撤去工事の有無を確認した
- 撤去工事費を確認した
- ONU等の貸与機器を確認した
- 返却先・返却期限を確認した
- 通信会社所有設備を施工会社が処分しないよう分けた
- 電話番号の移転・継続可否を確認した
- 原状回復工程に回線撤去日を組み込んだ
- 最終請求を確認した
オフィスのインターネット解約でよくある質問
オフィスを退去するとき光回線は必ず撤去しますか?
必ずではありません。物件・回線設備・貸主や管理会社の条件によって、撤去が必要な場合と残置できる場合があります。解約前に管理会社へ確認してください。
ネット回線を自分で撤去してもよいですか?
通信会社やビル側の設備が含まれる可能性があります。自己判断で光ファイバー等を切断せず、管理会社と契約中の通信事業者へ確認してください。
解約日と撤去工事日は同じですか?
同じとは限りません。サービスの最終利用日と、現地で設備を撤去する工事日が別になる場合があります。
ONUやホームゲートウェイは返却しますか?
レンタル品であれば返却が必要になる場合があります。撤去工事時に業者が回収するケースと、返却キットで利用者が返送するケースがあります。
市販のWi-Fiルーターも返却しますか?
自社購入品であれば通常は自社資産ですが、レンタルサービスの場合もあります。機器の所有者を確認してください。
プロバイダも別に解約する必要がありますか?
契約形態によります。回線とプロバイダが別契約なら、それぞれ手続きが必要になる可能性があります。請求先・契約一覧を確認してください。
インターネットを解約するとひかり電話も止まりますか?
利用しているサービス構成によります。光回線に紐づく電話サービスがある場合は影響する可能性があるため、代表電話等の移転手続きを先に確認してください。
今の固定電話番号を新オフィスでも使えますか?
回線種別、電話サービス、移転先などによって異なります。同一地域内の移転でも番号変更となる場合があるため、通信事業者へ確認してください。
LANケーブルも全部撤去する必要がありますか?
契約と工事区分によります。借主施工のLANが原状回復対象となる場合もあれば、残置を認められる場合もあります。管理会社へ確認してください。
新オフィスのネットが開通する前に旧回線を解約してもよいですか?
業務停止リスクがあるため、新拠点の回線開通と実際の通信確認を終えてから旧回線を終了する方が安全です。
ネット解約は「回線を止める作業」ではなく退去工程の一部として管理する
オフィスのインターネット解約では、回線事業者へ一本連絡して終わりとは限りません。
確認する順序は、
- 新オフィスの通信環境を確定する
- 現在の通信契約を棚卸しする
- 管理会社へ回線撤去条件を確認する
- 固定電話・IP電話の移転を確認する
- 新拠点を開通・テストする
- 旧回線の最終利用日を確定する
- 解約・撤去工事を行う
- 貸与機器を返却する
- LAN等の原状回復を完了する
です。
オフィス退去全体についてはオフィス移転・退去の進め方、電気停止についてはオフィスの電気解約もあわせて確認してください。
回線撤去と原状回復の順序が分からない、複数の通信契約があり整理できない、明け渡し期限までの工程を組みたい場合は、お問い合わせから移転日、明け渡し日、現在の回線・電話の利用状況などをお知らせください。
